たまたま立ち寄った図書館で、僕は司書である彼女に出会った。

静かな空気を纏い、凛とした佇まいの彼女は、どこか近寄りがたい美しさを持っていた。気がつけば、僕は彼女を見るためだけに図書館に通うようになっていた。

ある日の夕方、いつものように本棚の影から彼女を目で追っていると、不意に彼女が僕の方へ歩み寄ってきた。心臓が跳ね上がる。

「本、お好きなんですね？」

その柔らかな声に、胸の奥がじんわりと温かくなる。まるで世界が色づいたような幸福感に包まれた。けれど、次の瞬間、彼女の瞳がすっと細くなった。

「……でも、来館するたびに私のこと、じっと見てますよね？何を想像してるんですか？正直、気持ち悪いです」

その言葉は鋭く、容赦なく僕の心を貫いた。さっきまでのおしとやかな微笑みは跡形もなく消えている。僕はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

気づけば、僕は最初から彼女の手のひらの上で転がされていたのだ。彼女の静かな美しさの裏に、こんな冷たい一面が潜んでいるなんて、思いもしなかった――。


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